酢と油を主成分とするサラダドレッシングは、耐酸性に優れたキサンタンガムに最適な用途です。
耐酸性以外にも、ドレッシングには次のような物性が求められます。
・野菜の上から流れ落ちない適度な粘性と流動性
・長期保存のための加熱殺菌に対する耐熱性
・酢と油の懸濁状態を維持する乳化性
キサンタンガムは、こうした性質を全てカバーできる理想的な増粘安定剤であり、国内外のサラダドレッシングに幅広く利用されています。サウザンアイランドのような乳化タイプのドレッシングには、界面活性効果の高いアルギン酸エステルと併用するケースも多いです。
キミカキサンタン(キサンタンガム)
印刷するキサンタンガムは、とうもろこしや大豆を栄養分として微生物(Xanthomonas campestris)が発酵する際に産生される天然の増粘多糖類で、冷水にも温水にも溶かすことができます。溶液は静置状態で非常に高い粘性を示す一方で、撹拌や振盪などの力を加えると粘度が低下します。この性質をシュードプラスチック性と言います。
この性質によりキサンタンガムはドレッシングやソース,タレなどの増粘安定に広く利用されております。その他にも耐塩性,耐酵素性,凍結融解耐性に優れ、漬物,佃煮,塩辛などの増粘安定や冷凍食品の安定性向上など幅広い目的で多様な食品に使用されています。また近年では介護食分野での需要が伸びております。
特徴
キサンタンガムは、微生物(Xanthomonas campestris)の産生する細胞外多糖です。骨格はβ-(1–4)-D-グルコピラノースグルカン(セルロース)であり、側鎖が1残基おきに結合しています。側鎖はβ-(3-1)-α-結合 D-マンノピラノース-(2-1)-β-D-グルクロン酸-(4-1)-β-D-マンノピラノースからなります(図1)[1, 2]。
キサンタンガムは微生物発酵によって産生される多糖類として最初に商業化が成功した素材です。1960年代にアメリカで開発されて以来50年以上にわたってさまざまな食品に使用[3]されており、一日の許容摂取量(ADI)に上限を定める必要ないほどにその安全性は高く評価されています[4,5]。
日本では既存添加物に分類され、食品安全委員会によってその安全性は高く評価されています[6]。

図1 キサンタンガムの構造
性質
- 冷水、温水に溶けて粘稠なコロイド溶液となります。
- 味やにおいはほとんどありません。
- 低濃度で高い粘性を発揮します。
- 水溶液はシュードプラスチック性を示します。
- ローカストビーンガム(ゲル化)やグァーガム(増粘)との相乗効果がございます。
用途
- サラダドレッシング
- たれ、ソース
塩濃度の高いたれ、ソース類に適度な粘性を与え、濃厚感やコクを付与する増粘剤には、耐塩性に優れたキサンタンガムが最適です。キサンタンガムの粘性は長期安定であり、またデンプン類にはない耐酵素性にも優れているため、たれ、ソース類の食感を安定的に維持します。
- 介護食
加齢などで噛む力・飲む力が衰えると、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性が高まります。食べ物が限定されれば栄養バランスが偏りますし、食の楽しみが失われることはQOLの低下にもつながってしまいます。
このような咀嚼・嚥下困難者に対して、食べ物の固さを適度にコントロールし、あるいは飲み物にとろみをつけることで誤嚥を防ぐように工夫した介護食が開発されています。
介護食の加工には、当初デンプンがよく利用されてきましたが、最近ではデンプン以外の増粘剤が使われることが増えました。中でも素早く水に溶解し、温度やpHの依存性が少なく、低カロリーで味やにおいも少ないキサンタンガムは、介護食にとろみを与える素材として広く利用されています。 - アイスクリーム
アイスクリーム、シャーベットなどの氷菓に少量のキサンタンガムを配合すると、適度な濃厚感、果実感をもたらす食感改良効果を発揮します。
- 化粧品
微生物の発酵産物であるキサンタンガムは、石油系の素材よりもナチュラルで肌に優しい増粘剤と位置づけられ、自然派化粧品に欠かせない増粘剤となっています。
高濃度で膨潤したキサンタンガムはシュードプラスチック性のジェルとなりますし、低濃度で化粧品の粘度や流動性を微妙に調整することもできます。多くの化粧品にこうしたキサンタンガムの性質が利用されています。 - 歯磨き
歯磨きに配合された研磨剤などの成分が沈殿・分離することを防ぎ、さらに口の中で適度な粘性を与えるための粘結剤として、キサンタンガムが利用されています。
商品一覧
キミカキサンタンは粉末粒度の異なる5グレードをラインナップしています。
粉末品
キサンタンガムをベースとした商品です。
メッシュサイズ(粒度)や膨潤性など、用途に適したグレードがラインナップされています。
グレード名 | 粘度 (1.0%水溶液, 25℃)* |
粉末形状 | 特徴 |
---|---|---|---|
EC | 1,200 ~ 1,800 mPa・s | 80Ms | 他の粉体とあらかじめ混ぜてご利用頂く 用途に適しています。 |
EC-200 | 1,200 ~ 1,700 mPa・s | 200Ms |
造粒品
キサンタンガムは冷水,温水の両方に溶解しますがご利用方法によってはダマになる場合がございます。
この問題を解決するため、キミカキサンタンは粉末形状を調整し、分散性,溶解性を向上させた造粒グレードをラインナップしております。
グレード名 | 粘度 (1.0%水溶液, 25℃)* |
粉末形状 | 特徴 |
---|---|---|---|
PH-EC | 1,000 ~ 1,900 | 造粒品 | 投入時の分散性を向上させた造粒品です。 |
F-EC | 1,200 ~ 2,000 | PH-ECよりも粒度が粗く分散が容易 粘性の発現が早くなっています。 |
|
PH-R3EC | 1,200 ~ 2,000 | 粒度が最も粗く分散が容易 弱い撹拌力でも溶解可能です。 |
粘度参考
・オレンジジュースの粘度5~15 mPa・s
・オリーブ油の粘度~90 mPa・s
・練乳の粘度~200 mPa・s
・卵黄の粘度~800 mPa・s
・グリセリンの粘度~1,100 mPa・s
・蔗糖水溶液の粘度~3,000 mPa・s
*1%KClで溶解, 回転式粘度計, 25℃, 60 rpmで測定
1 mPa・s = 1 cP
キミカキサンタンは、増粘剤の製造販売におよそ80年の実績を持つキミカが、そのノウハウを活かし、高品質でコストパフォーマンスに優れたキサンタンガム製品を、キミカ独自の品質保証体制でお届けするものです。
参考文献
1. Srivastava A, Behari K (2007) Synthesis and study of metal ion sorption capacity of xanthan gum-g-2-acrylamido-2-methyl-1-propane sulphonic acid. J Appl Polym Sci 104:470–478
2. Adhikary P, Singh RP (2004) Synthesis, characterization, and flocculation characteristics of hydrolyzed and unhydrolyzed polyacrylamide grafted xanthan gum. J Appl Polym Sci 94:1411–1419
3. 國崎直道, 佐野征男,食品多糖類 : 乳化・増粘・ゲル化の知識,幸書房
4. EFSA Panel on Food Additives and Nutrient Sources added to Food (ANS), Re-evaluation of xanthan gum (E 415) as a food additive, EFSA Journal, doi: 10.2903/j.efsa.2017.4909
5.WHO | JECFA
6. 厚生労働省Webサイト,食品添加物
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